■あらすじ
水仙が咲く月(東北地方では四月)、北国では時折冬に逆戻りしたような猛吹雪が吹き荒れることがあります。水仙月の四日も、雪婆んごが、一嵐吹かせようと西の山の空から、雪童子と雪狼を引き連れてやって来ました。そこでは、雪丘をひとりの子供が山の家の方へ急いで歩いていました。そして、見る間に日が陰って風が吹き雪が雪煙になり一面灰色になりました。その子供は雪に足を取られ倒れてしまいました。一人の雪童子が、雪婆んごの目を盗みながら、その子供が凍えてしまわないようにそっと声をかけました。やがて雪婆んごも雪童子たちも去り吹雪はやみ春の日差しが戻りましたが、ひとりの子供はやさしい雪童子のおかげで、探しに来たお父さんに見つけ出されました。
■みどころ
童話集「注文の多い料理店」に収録された一編です。イーハトーブの厳しい自然の中で、自然界と人間の子どもとの心のふれあいは、賢治の他のいくつかの作品にも描かれています。真っ白な雪や吹雪の中に赤い毛布や木の実、ほっぺたや舌が鮮やかに輝く色彩感豊かに物語が展開します。)