■あらすじ
尋常5年生の金田一郎のところに山猫からおかしなはがきが届きました。明日裁判をするので来てくださいというので、一郎はうれしくなり、次の日に山猫に会いにでかけました。榧の木の森の中の黄金色の草地で一郎が馬車別当と話しているところへ山猫が現れ、次に300以上の黄金色の赤いずぼんをはいたどんぐりが現れ、どんぐりたちはわあわあと誰が一番偉いか言い争いをしています。これで3日目だとの山猫の困り果てた様子に、一郎は、山猫に耳打ちします。「よろしい。この中でばかで、めちゃくちゃで・・・ようなやつが一番偉いのだ。」という山猫裁判長おの名判決でどんぐりたちはようやく静かになりました。一郎はお礼に黄金のどんぐり一升をもらって帰りましたが、家に着いた時には茶色のどんぐりになり、これからも来てくださいと言っていた山猫からももうはがきが来ることはありませんでした。
■みどころ
この作品の山猫の存在イメージが宮崎駿氏のアニメ作品「となりのトトロ」に大きな影響を与えたと言われています。もちろん、フィンランドで生まれたムーミンのモチーフだった北欧の森の主トロールの影響もあるのでしょうが、武蔵の森に子どもを誘ってくれるトトロと、イーハトーブの森へ少年を招待してくれる山猫と、その神秘性・深遠性に共通のものを感じずにはいられません。
賢治が教師時代に出版された童話集「注文の多い料理店」の中の一作品ですが、当時の教師としての賢治が学校での教育というものに疑問を感じていたであろうことは、「大きい、高い、とがっている」と見栄えや強さで競争させられているどんぐりたちが登場するこの作品から容易に想像できることです。一郎の名案は法華経の教えからきているのでしょうが、学校を去り木偶の坊の姿に傾倒していくその後の賢治を暗示しているかのようです。
■合唱劇「どんぐりと山猫」作曲:萩京子
上演:合唱団じゃがいも(第26回定期演奏会 1999.11.13山形市民会館大ホール)
小さな子どもたちがどんぐりに扮して歌いながら跳ね回る楽しいステージとしてオペラシアターこんにゃく座などにより全国各地で上演されています。