8 よだかの星

■あらすじ
 よだかはみにくい鳥だとの評判で、鳥の仲間で毛嫌いされていました。大きくて強い鷹は、「たか」の名前を盗んだとして、名前を返して早く改名しろと迫ります。よだかは自分がどうしてこんなに嫌われるのかわかりません。その悲しみは、虫を捕って食べる自分に向けられました。よだかは虫を食べずに飢えて死のうと思いましたが、それよりも早く遠くの空の向こうに行ってしまった方がいいと考えました。でも、太陽や星たちに自分を連れて行ってくれるよう頼んでも取合ってもらえませんでした。よだかががっかりして地に落ちようとしたとき、よだかの身体はにわかに狼煙のように空へ飛び上がり、とうとう夜空に赤く燃える星になったようでした。

■みどころ
 見た目や声が違っていることで仲間はずれにされたよだかは、子供たちの学校におけるいじめが社会問題になってこの方、いじめられる側への共感を呼ぶ存在としてしばしば取り上げられてきたように思えます。賢治の時代にもいじめはあったのでしょうが、それよりもこのお話は自己否定したよだかが昇天したこと自体に賢治の思いが込められているのかもしれません。
 弟のカワセミと末っ子の蜂雀は賢治の妹トシと弟清六になぞらえているようにも見え、虫を食する自分を否定するよだかはベジタリアンだっった賢治に重なります。賢治自身、宮沢商店の長男に生まれた出自を乗り越えようと法華経の世界を信奉し、ほんとうの幸福をのために行を積んでいった賢治の姿も、夜空の星を目指して上昇を続けるよだかに見えてくるような気もします。だからこそ、今でもまだ燃えている星に希望の光が感じられるのかもしれません。

■合唱劇「よだかの星」作曲:萩京子
 上演:合唱団じゃがいも(第22回定期演奏会 1995.11.4 山形市民会館大ホール)