9 狼森と笊森、盗森

■あらすじ
 岩手山の麓の小岩井農場の北側にある狼森、笊森、黒坂森、盗森の四つの森がいつごろどうしてできたのかを、黒坂森の真ん中の大きな岩がわたしに話してくれました。岩手山が噴火して灰の積もった大地に木々が生えてもりになった頃、四人の百姓と家族たちがやって来て、「ここへ畑起してもいいかぁ。」と聞くと、「いいぞお。」と森が一斉に答え、百姓たちはここに家を建て畑を起し始めました。森の恵みに守られながら、畑は広がり、子供も馬も増えました。
 ある日、子供がいなくなったり、農具がなくなったり、粟がなくなったり、不思議なことが起こるたびに、百姓たちは森に入っていきました盗森が少し悪さをしたときには、岩手山が森を叱ってくれました。それから森はすっかりともだちになり、百姓たちも毎年粟餅を森に届けました。

■みどころ
 イーハトーブの農民と森とがどのようにして友好関係を築いていったのかを、微笑ましい交歓風景を通して描いた開拓譚です。森や山やそこに生きる狼などの動物たち、山男など心霊的存在などが、互いに受け容れながら関係をつくってきたことに気付かされます。
 百姓たちと森とが会話する風景は、私たちが失ってしまった素直な心を呼び覚ましてくれるような気がします。

■合唱劇「狼森と笊森、盗森」作曲:林光
 上演:合唱団じゃがいも(第25回定期演奏会 1998.10.24 山形市中央公民館ホール)