■あらすじ
麻生農学校の教師をしている「私」は、ある日曜日、火山弾の標本採取と野生の浜茄の確認のために茨海と呼ばれる野原に行きました。半日かかって火山弾を一つ見つけた後、私は、学校のベルや子供らの声に誘われてそっちへ走って行くと、茨海狐小学校の前に来ました。そこで、私は、校長先生の案内で茨海狐小学校の午后の授業を参観することになりました。一年生の修身と護身、二年生の狩猟術、三年生の食品化学の授業を参観した私は、狐の生徒たちのわあわあ叫ぶ声をあとに茨海の野原を走ってうちへ帰りました。
■みどころ
イーハトーブの狐たちとの遭遇といえば、「雪渡り」を思い起こします。あちらは10歳以下の子供にしか見えない世界でしたが、こちらは賢治を思わせる農学校の先生と狐の学校の教師と生徒たちとの大人も含めた交流のお話です。人間社会にとって狐との関係は「狐が人を化かす」ことと「人が罠を仕掛けて狐を獲る」ことで、狐小学校の授業もそれに関係したことが教えられています。でも、ユーモアあふれる授業風景を見た「私」は、最後に「一体どういう教育方針だか一向さっぱりわかりません」と言います。この作品を読むと、狐世界の価値観は人間とは違ったところにあるのかもしれないと思えたりもします。。