10 いちょうの実

■あらすじ
 ある晩秋の夜明け近く。丘の上の一本いちょうの木では、お母さん木に千のいちょうの実がなりました。今日はいちょうの実たちの旅立ちの日です。いちょうの実たちは一斉に目を覚まし、それぞれが旅の準備のことやこれからどこへ行くのかの不安などをめいめいが語り合っています。その間にも空はどんどん明るくなっていき、とうとう太陽の光が差してきたときに、いちょうの実たちは「さよなら、おっかさん。」と言いながら一斉に枝から飛び降りました。


■みどころ
 旅立ちの日の日が差すまでに刻々と変化していく空の情景の描写がとてもきれいです。
 その中でいちょうの実たちはそれぞれの不安や夢を語り合います。そして、お互いに協力し合って運命の時を迎えようとしています。「どんぐりと山猫」のどんぐりたちとはまったく違った仲の良さです。
 1000人の子供たちが一斉に旅立ちの日を迎えるイソイソした姿、それを悲しむ母という光景は、何やら教師が卒業式が始まる直前の教え子たちの姿を見ているようです。これから羽ばたこうとしている農学校の生徒たちに対する賢治の温かいまなざしを感じます。

■朗読劇「いちょうの実」 上演:合唱団じゃがいも(第43回定期演奏会 2016.12.4 山形市民会館大ホール