18 洞熊学校を卒業した三人

■あらすじ
 洞熊学校の洞熊校長先生の教えは「何でもいいから一番になれ」ということ。生徒はいつも自分が一番だと言い争っていました。
 ある年、赤い手長の蜘蛛と銀いろのなめくじと顔を洗ったことのない狸が洞熊学校を卒業しました。
 蜘蛛は、空腹に耐えながら網を張ってそこにかかった虫を食べ大きくなりました。夫婦になってさらに立派な網を張りましたが、獲物がかかりすぎてそれがたまって腐敗して、それが蜘蛛たちにうつって腐れてべとべとになり雨に流れてしまいました。
 なめくじは、人がよくて親切でお腹が空いたり病気の生き物たちに食べ物や薬を分けるのですが、最後にはその生き物たちを食べてしまうのでした。そこへ喉の渇いた蛙が来て水を分けたなめくじは、蛙と相撲を取っているときに、蛙に塩をまかれて溶けて死んでしまいました。。
 狸は、山猫大明神の使いになりすまして、救いを求めてくる生き物たちに説教をしながらその生き物たちを食べてしまうのでした。ところが、狼と一緒に持ってきた籾を食べたところ腹の中が稲でいっぱいになりとうとう腹が裂けてしまいました
 そこへ洞熊校長先生がやってきて、三人とも賢いいいこどもらだったと残念がり大きなあくびをしました。

■みどころ
 標題に「寓話」とあるように、賢治作品の中でもことのほかブラックユーモアの効いた風刺的な作品です。蜘蛛となめくじと狸のお話は賢治童話の初期からあったようですが書き直されてこの最終形となりました。学校教育を皮肉っているのか人間社会の不条理を突いているのかもっと大きな自然の摂理を暗示しているのか、読む人によって感じ方は様々なのかもしれません。

■合唱オペラ「賢かった三人」作曲:林光
 上演:合唱団じゃがいも(第31回定期演奏会 2004.11.6山形市中央公民館ホール) 合唱劇として動物たちを演ずる役者の後ろに合唱団という群像が加わることによって、単なる寓話が厚みのある奥深いドラマとなって観る人を楽しませます。