■あらすじ
ゴーシュは映画館で無声映画の音楽を演奏する金星音楽団のセロ(チェロ)奏者です。でも、楽士の中では一番下手な方で指揮者からいつもいじめられていました。ゴーシュは演奏が終わると町外れの川端にある水車小屋の家に疲れて帰り、夜中過ぎまで何べんも練習をしました。
その晩、水車小屋に三毛猫がやってきました。生意気な口をきく猫に怒ったゴーシュは、マッチで驚かせると「インドの虎狩り」を夢中で弾いて猫を追い出しました。
次の晩はかっこうがやってきました。かっこうからドレミファの音階が違っていると指摘されるとゴーシュは怒りだし、驚いたかっこうは窓から逃げてしまいました。
次の晩は子狸がやってきて、ゴーシュの演奏が遅れることを指摘します。
その次の晩はねずみの母子がきて、セロの音で子ねずみの病気を療してもらいます。
そして六日目の晩、本番の第六交響曲を無事終えたゴーシュは、指揮者からアンコールの独演を指名され、夢中で弾いた演奏は観衆や仲間の絶賛を浴びました。
ゴーシュは不思議な気持ちで水車小屋に帰りました。
■みどころ
下手なチェロ奏者のゴーシュが上達して皆の絶賛を浴びるというストーリーに動物たちとの奇妙な夜の練習の夜を織り込んで、何とも魅力的な一人の演奏家の成長譚となっています。それでも、拍手喝采を浴びた後のゴーシュの不満げな仕草や最後のかっこうへの意味深な言葉がハッピーエンドではない奥深さを感じさせてくれます。賢治が東京のオーケストラ指揮者にチェロを習い羅須地人協会で楽団を結成して演奏会を開いたことは農民芸術を極めようとする賢治の真摯な生き様だと思います。賢治のその思いがこの童話にも込められているのだと思います。
■合唱オペラ「セロ弾きのゴーシュ」作曲:林光
上演:合唱団じゃがいも(第35回定期演奏会 2008.12.20山形市中央公民館ホール) 金星音楽団の楽団員になった合唱団がゴーシュと動物たちとの毎晩のエピソードの場面では、変幻自在にゴーシュの混乱状態を表現し楽しい合唱劇に仕上がっています。。