16 蛙のゴム靴

■あらすじ
  三匹の蛙カン蛙、ブン蛙、ベン蛙は、年も大きさも同じ。林の中にそれぞれ住んで、夏の夕方は雲見を仲良く楽しんでいました。ある日、人間界でゴム靴が流行っていることを知って、自分たちも欲しくなりました。カン蛙が早速、野鼠に頼んでゴム靴を手に入れることができました。野鼠が大変な思い出手に入れたのも忘れて、自分用に加工してブン蛙とベン蛙に見せびらかしました。そこへやって来た美しい娘のルラ蛙が、ゴム靴に見取れてカン蛙に求婚します。
 ブン蛙とベン蛙は、カン蛙を妬ましく思い、カン蛙にいたずらしてゴム靴をボロボロにしてしまいます。そして、畑の落とし穴に落とそうとしましたが、結局三匹とも穴に落ちてしまいます。ルラ蛙の父の機転で仲間の蛙たちによって助け出された三匹は、みんな心を改めてよく働くようになりました。

■みどころ
 三匹の蛙がお互いを比べて自慢したり妬んだり。その原因は人間界のゴム靴。岩手の人たちが自然につつまれて仲良く生きていたのに、東京の華やかな物質文化が入ってきて、無用な争いが起こり始めた、などという当時の社会を風刺していると取れなくもありません。「注文の多い料理店」のテーマにも似ていたり、他人の苦労もわきまえない自分勝手な三匹の蛙の行動は、「蜘蛛となめくじと狸」を想起させます。
 それでも、この作品が微笑ましい印象を受けるのは、賢治作品にはめずらしいハッピーエンドだからかもしれません。