
■あらすじ
野原に咲くひなげしたちは、自分の一生を「ああ、つまらない」と嘆くばかり。お互いを比べ合って、羨んだり落胆したり。後ろに立っているひのきが励ましているのに意味もわからず逆にひのきを軽蔑しています。
そんなひなげしたちを悪魔が欺してひなげしの実から取れる阿片を取り上げようとします。気高いバラ娘を連れてきて、美容術で美しくなれると思い込ませ、悪魔が医者に化けて、言葉巧みに阿片を渡すと約束させると、おもむろに薬を飲ませ始めました。その様子に気付いたひのきは、大声でにせ医者を追い払いました。そして、自分だけが美しいスターになろうとするのではなく、めいめいがそれぞれ光り輝いているのがオールスターキャストだと諭すのですが、ひのきたちは理解できずにひのきを軽蔑するばかりでした。
■みどころ
お互いを比べ合って自慢したり劣等感を抱いたりというひなげしたち。「どんぐりと山猫」のどんぐりたちにも似ているような、「めくらぶどうと虹」のめくらぶどうにも似ているような。人間も含めていのちある者たちの生きる悲しさのようなものが賢治の童話には散見されます。
「あめなる花をほしと云い この世の星を花という」とのひのきが語る言葉は、土井晩翠の詩「星と花」の一節をモチーフにしているとの説があります。