25 カイロ団長

■あらすじ
 三十匹のあまがえるが虫たちに頼まれて庭づくりの仕事を一緒に面白くやっていました。ある日仕事帰りのあまがえるたちが桃の木の下を通りかかると、とのさまがえるがウイスキーの店を出していて、あまがえるたちは言われるがままに何杯も何百杯も飲んで眠ってしまいました。あまがえるはお金のないあまがえるたちを脅して、とうとう皆を自分の家来にしてしまいました。とのさまがえるは「カイロ団」の団長を名乗ります。ところが、カイロ団には仕事の依頼が来ません。とのさまがえるは、仕事の準備と称して、あまがえるたちに途方もない労働をいいつけ、やらないと警察に訴えて死刑にすると脅します。ところが、突然、王様の命令が出て、ひとに物をいいつける者は体重に比例した分量を自分で2日間やってからでなければいいつけてはいけないことになりました。大喜びしたあまがえるたちでしたが、とのさまがえるを嘲り笑ったことで寂しくなり、王様の新しい命令に従って憎み合うことをやめ、カイロ団長を介抱しました。次の日からあまがえるたちは、また楽しく庭づくりの仕事に精を出しました。

■みどころ
 真面目でひ弱なあまがえると大きくてずる賢いとのさまがえる。弱者をいじめる強者に天罰が下るという勧善懲悪のお話に収まらないところが賢治の童話ならでは、です。三十匹のあまがえる集団が救われたとしてもそれだけでは世界全体が幸福にはならない、表面では争う関係だとしても、憎み合うことなくそれぞれがそれぞれを尊重して自らの生きがいを感じて生きて行くようになって初めてそれは実現する、ということではないでしょうか。