26 フランドン農学校の豚

■あらすじ
 フランドンの農学校には実習のために豚を飼っています。畜産学の教師は毎日豚の様子を観察し、脂がうまくのるように餌や運動や日照の指示をしていきます。ところが、ある日国王が「家畜を殺そうという者はその家畜から死亡承諾書を取らなければならない」というおふれを出しました。農学校の豚の死亡承諾書を取のは校長先生の役目となりました。校長先生がいくら説明しても、農学校の豚は死亡承諾書に判を押す気にはなれません。次の日もそうでした。豚は眠れずにやせてしまいました。畜産学の教師は、あわてて強制的に餌を注入して豚を太らせた。校長もとうとう怒りだしたので、豚は恐くて判を押してしまいました。七日たって豚も太ったので明日に殺すことが決まりました。豚はお風呂で洗われて、生徒たちが腕まくりをして待っている外へ連れ出されると、大きな小刀で刺されてからだを八つに解体され、雪の中に積まれて月に照らされていたのでした。

■みどころ
 賢治が教鞭をとった花巻農学校でも豚の飼育が行われていて、恒例行事のようにして飼育した豚を殺して解体するということが行われていたのでしょう。畜産学の教師ではなかったものの、賢治は複雑な思いを持って見ていたのではないでしょうか。
 「ブタがいた教室」という映画が話題になったことがありました。小学校で豚を育ててその豚を食べることで「いのち」についての理解を深めるという実践教育。人はいのちあるものをいただいて生きていることを自覚し、感謝の気持ちをもって過ごすことが大事だと教えてくれます。
 「フランドン農学校の豚」は豚の視点で豚の心理が描写されていて、違った視点も感じさせます。豚は最後まで自分が殺されることを受け容れておらず、育ててやったという飼育者の論理で押し切られただけ。いのちには限りがあることを受け容れながらもすべての生き物が共に生きていくためには何が必要か、問いかけているようにも思われます。