
「おきなぐさ」は「うずのしゅげ」と呼ばれています。このうずのしゅげをみんな大好きなのです。
蟻は黒かったり赤かったりする美しい花、病気を癒やす葉や茎の銀の糸。
森の山男はうずのしゅげを見つけると腰を下ろしてみとれています。
小岩井農場の南、七つ森の西で二本のうずのしゅげが遠くを見ながら雲が流れるのを見ています。そしてその2か月後、うずのしゅげの花はふさふさした銀毛の房に変わっていて、きれいなすきとおった風がやってくると一本ずつに分かれて風に乗って飛んでいきました。ひばりは空へ飛び上がってお別れの歌を贈りました。天井で星になっていることでしょう。
■みどころ
「うずのしゅげ」は花巻地方でのおきなぐさの呼び名で、おじいさんのひげという意味です。
花びらが落ちると銀毛をつけた果実の房になって、風に乗ってひとつひとつバラバラに飛んでいきます。運命の風がやって来て「さようなら」と言いながら飛び散っていく場面は、「いちょうの実」のお話を思い起こさせます。自然の生命の普遍的なエネルギーを感じさせます。
一方で、「翁」草の場合は、生命の終焉をも意識させます。雲雀が銀毛を追うのではなく天へ昇る翁草の魂を追って鎮魂の歌を歌ったと想いを馳せるラストが、この作品により荘厳なイメージを与えています。