34 鳥箱先生とフゥねずみ

■あらすじ
 厚い板でできていて正面だけが網の戸になっている鳥かごは、その姿が先生に似ていることに気付いて、自分を「鳥箱先生」と呼んで威張っていました。中に入れられたひよどりは飢えたり病気になったり猫に襲われたり、次々と可哀想な死に方をしても「哀れなことだ」と言うだけです。
 そこへねずみの母子がやってくると、鳥箱先生は自分の自慢をしてフゥという子ねずみを立派に教育してみせると持ちかけます。ところが、先生がフゥねずみの歩き方や姿勢について注意をしても、出来のよくない友達を挙げて自分の方がマシだと言うので、鳥箱先生はねずみのおっかさんを呼び出して怒りました。するとそこに猫大将が現れてフゥねずみをつかんで叩きつけ、「先生もだめだし、生徒も悪い。国家の前途が思いやられる」と言いました。 

■みどころ

 鳥箱先生は、人間社会の学校で教育に携わっている先生たちを風刺しているのかも知れません。そこには、花巻農学校で教鞭をとった賢治の経験も入っているのかも知れません。また、フゥねずみもどの学校にもいるような生徒の一つの典型とも考えられます。
 最後に猫大将が出てきてご託宣を述べるところは、「猫の事務所」の最後に獅子が現れて事務所の解散を命ずる場面を彷彿とさせます。それにしても、自分勝手で慢心している鳥箱先生だけでなく、フゥねずみの方も叩きつけられているのはちょっと可愛そうではありますが、言い訳ばかりして課題から逃げている生徒にも非はあるとのことでしょう。先生としての生徒へのき然とした激励のメッセージを感じます。